研究概要 |
本研究では,高次元分光画像センサを対象とした新しいデータ処理・情報抽出方式について,目的指向のセンシングという観点から研究を行った.計測の目的に応じて抽出すべき情報を適応的に設定して対象をセンシングする手法の開発を目標とした.本年度は,前年度に開発した特定の物質に着目してその濃度を選択的に定量する手法を改良・発展させるとともに,従来開発してきた定性的な情報の抽出(カテゴリ分類)のアルゴリズムを拡張して時系列に得られた画像データにも適用した.人口衛星JERS-1の合成開口レーダーによって時系列に得られた画像に基づき,マングロープ林の分類識別を目的として特徴抽出を行い,反射特性の時系列変化による分類を行ってその有効性を確認した.一方,対象中に含まれる未知カテゴリのスペクトルを観測データ自身から適応的に推定しつつ定量を行う手法について,基礎検討とシミュレーション実験を行った.実際の画像では,各画素中に複数の物質が混在する可能性が高いため,画素中の複数の物質の混在率を推定する処理(カテゴリ分解)が有効な場合があるが,対象のスペクトルが既知でなければ正しい結果が得られない.ここでは,観測データ自身からスペクトルを推定しつつ含有率を推定する手法(適応的カテゴリ分解)のアルゴリズムを検討した.対象画像中には単一のカテゴリのみからなる画素が少なくともひとつは存在することを仮定し,それらの線形結合で一般の画素の分光特性が表現できるとして,要素物質のスペクトルを特徴空間で決定した.シミュレーション実験により,画素中の面積比の推定精度が向上することを原理的に確認した.
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