研究概要 |
ヒトの運動戦略を解明することを目指して,予備実験として2次元平面内の運動に限定して,筋の活動度,関節のトルクおよび関節の伸展速度を計測実験を行ったところ,定位置制御時のみならず,等速度で肘関節を伸展する場合にも,関節角度-トルク関係には弾性が認められた.また,伸展速度が増大するとトルクが比例的に減少し,粘性を無視することができないことが分かった.またこの比例的な減少を,伸展速度が遅い場合にHillの式を拡張して適用することで説明できることが分かった.次に,筋の粘弾性の調節機構を探るために,指の筋を対象にして,収縮力を発生している筋を伸展するときに観測される張力(筋の弾性による張力)と,筋電図および収縮力の関係を調べた.正弦波的に収縮力を変化させているとき,筋電図が先に変化し,次に伸展によって発生する張力が変化した.収縮力がもっとも遅れて変化した.このことは,運動時には,筋の粘弾性が単に収縮力に比例するものではないことを示している.また,ヒトが運動を行う際には,中枢からの指令は,脊髄のα運動神経を介して,筋線維へ伝えられ,筋の粘弾性を筋の収縮力に先駆けて調節することを示唆している.今後,運動時の弾性の調節機構を調べ,開発したシステムによって3次元の動作時の筋の弾性および収縮力の調節機構を明らかにする予定である.
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