研究概要 |
昨年度(平成9年度)実施した,多数の誘電物体からなる不規則媒質(ランダム媒質)の等価媒質定数を記述するパラメータである等価誘電率の近似式を用いて,地下水層を持つ大地モデルにおける電磁波の反射係数の数値計算を行った。また,本研究の成果に基づいて,近年,光・マイクロ波領域で話題になっているキラル媒質を,粒子化して電気・電子材料として用いる場合に必要となる電気的特性(等価媒質定数)算定法についての応用の可能性を調査した。本年度得られた研究成果を以下に示す。 1. 昨年度導出に成功した,多数の2層誘電体球から構成される不規則媒質の等価媒質定数算定式の数値的な検証を行い,その妥当性を確認した(国際会議″IGARSS″98″)。 2. 本研究で得られた等価誘電率算定法の応用例を示すために,地下水層を持つ大地モデルを考え,電磁波に対する反射係数の数値計算を行い,その妥当性を示した(電気関係学会九州支部連合会大会)。 3. 本研究で得られた等価誘電率算定式を更に低周波近似することにより,光・マイクロ波領域で話題になっているキラル媒質(キラル球)のランダム分布からなる媒質(電気・電子材料)の等価媒質定数が算定できることを示し,異方性粒子からなるランダム媒質の等価媒質定数算定法の開発の可能性を調査し,良好な結果が得られた(電気学会A部門総合研究会,国際会議″PIERS 1999″)。 今後の課題として,(1)任意の入射角に対する大地の反射係数を求め,電磁波による地下水層探査の可能性の検討を行うこと,(2)キラル媒質を含む異方性混合媒質の等価媒質定数算定法の確,(3)FDTD法等のシミュレーション法を用いて,得られた結果の妥当性を再確認する,等が挙げられる。 本研究は,各種リモートセンシング,衛星通信技術,及び,電気・電子材料のマクロ的な電気的特性解析の基礎研究として有用である。
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