研究概要 |
阪神大震災においては,神戸市須磨区から宝塚市にかけて,『震災の帯』と称されるような被害の集中領域が出現した.その規模は幅1〜2km,長さ約29数kmで、ちょうど六甲山と海岸地帯に挟まれた帯状の領域であった.このような被害の集中が起こった原因として,神戸市の複雑な地盤構造・地形によるフォーカシング現象の存在が考えられている.神戸周辺の地層を大別すると,山側(六甲山)の洪積層(硬い地盤)と浜側の風化まさ土(軟らかい地盤)に分けることができる.こうした地盤特性の違い,そしてそれらの構造的特性が上述のような被害の局所化を引き起こした原因の1つと考えられている.そこで本年度はまず,地震動が材料中をどのように伝播するかを明らかにするために,非常に平易は物理モデルを用いて解析的検討を施すこととした.検討項目として,(1)地盤の硬軟による影響,(2)地盤の不整形性という2点に主眼をおいて研究を進めた. (1)については,硬質と軟質の地盤が複合することで地盤中の振動伝播や表層における波形特性や増幅に違いが生ずることが判明した.また,(2)に関しては,変化させるのにともない,表層地盤の増幅もそれに呼応して変化し,地盤の構造が大きな影響を及ぼす可能性が大きいという知見を得た.これらの研究成果の一部を,平成9年度土木学会年次講演会,および土木学会関東支部技術研究発表会にて研究発表を行なった. 最終的に,地盤特性や地盤構造の違いに加えて,地質境界部に不連続面を入れることによって,どのような影響が生じるのかなど,より現実に近い問題・状況を設定して解析を行ない,解析と実現象の比較・検討を行ない,(1)および(2)について詳細な検討を加えた.一連の研究により,地震動伝播,特に表層におけるその挙動は地盤特性に大きく左右され,地盤特性を十分に考慮に入れていない従来の耐震設計では,カバーできない面が存在する可能性があることを示唆した.
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