研究概要 |
岩盤割れ目系はサイトによって異なる.これは割れ目の形成過程がその地域の受けた応力履歴に依存しているためである.したがってその地域の地史学的な側面,特に割れ目系の形成過程を明らかにし,岩盤としての変形挙動や水の流れと関係づけていくことが割れ目系を評価をするうえで重要である.平成9年度における原位置調査から主要な水みちおよび粘土化し脆弱化した割れ目は,比較的新しい時期に活動したものと推定された.このとき変位した割れ目は,既存の割れ目すべてではなく,選択的に変位させられている.そこで平成10年度の研究では,このような挙動を初期クラック分布を有する岩石中におけるクラックの進展過程とモデル化して,割れ目系がどのように発達していくか,その形成過程に関する考察を行った. 対象とした岩石は稲田花崗岩であり,はじめにこの岩石における初期マイクロクラック分布を把握するために岩石薄片を作成し,初期状態におけるクラックの方向分布,クラック長の頻度分布等のクラックの特徴を明らかにした.またレプリカ法を用いてクラックの特徴を抽出するための画像解析方法を提案し,これによりクラックの特徴を比較的容易に,広範囲にわたって計測することが可能となった.次に,ひずみ速度と拘束圧をパラメータとした三軸圧縮試験を実施した.その結果,ひずみ速度の効果は,軸ひずみ一周方向ひずみ関係に直接的に反映されること,また上記レプリカ法とその画像解析方法を適用することにより,載荷により発生・進展したクラック載荷軸方向と初期クラック分布に強く支配されること,軸ひずみ量を一定とした試料においてはひずみ速度が小さいほどランダムな方向を向いたクラックが多く発達すること,このことは岩石の破壊強度がひずみ速度の減少とともに小さくなることに深く関連していることが明らかとなった.
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