研究概要 |
本研究では、建物およびその壁面とそこにはさまれた路面で形成される都市キャニオンを都市の最小梢成単位として捉え、まずキャニオンスケールにおける理論モデルを導出した。 日射に関しては直達光、散乱光のそれぞれについて、屋根面、壁面、路面における吸収、反射、キャニオン空間内での多重散乱を定式化した。赤外放射に関しては、天空からの放射、屋根面、壁面、路面からの放射、および壁面路面間の放射の交換を、天空率を用いて定式化した。 運動量の吸収については主に壁面が、顕熱フラックスの発生源としては主に屋根面が作用するため、都市域の乱流輸送過程は植生地のそれとは大きく異なり、植生地における葉面積密度を建物表面積密度に置き換えて考えるだけでは都市の乱流輸送過程をうまく表現できない。そこで、運動量吸収に関しては建物断面積を、顕熱輸送に関してはそれぞれ屋根面と壁面の表面積を用いて定式化を行なった。 モデルをメソスケール以上に適用するためには、個々のキャニオンスケールでの現象をグリッドの水平スケールまで積分し、グリッド領域の平均応答として表現する必要がある。本研究では、屋根面高度分布や建蔽率といった、航空写真や衛星リモートセンシングデータから推定可能となることが期待される幾何学的パラメータを用いてこのグリッドスケールの応答を数学的に表現した。 導出したキャニオンスケールおよび市街地スケールの都市モデルを検証するために、現地観測も実施した。放射収支計、アルベドメータ、赤外放射計(2個)、放射温度計で構成される放射観測システムを構築し,NTT長浜営業所の鉄塔上に設置し,都市の平均応答としての放射観測を実施した。また同時に長浜市内の民家や市役所において展開されている都市熱収支観測(琵琶湖プロジェクト)のデータも利用してキャニオンスケールのモデル検証を行なった。 また本研究で開発した都市域モデルを陸面過程モデル(SiBUC)に組み込み,メソスケール大気陸面結合モデル(JSM88-SiBUC)の数値シミュレーションで都市の効果が反映されている。
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