研究概要 |
本研究では,長期間の現場観測を通して地下水汚染浄化対策の一つであるエアースパージング技術(空気注入技術)の評価を行った.エアースパージング技術は,地下水中に空気を吹き込み,地下水を攪拌することで溶解している物質を注入空気に揮発させ,不飽和帯からガスとして除去するものである.この技術は,従来から行われている土壌ガス吸引・地下水揚水処理(二重抽出技術)と比べると,(1)汚染された地下水の処理が不要になる,(2)地上設備の設置が簡単,(3)費用が安くなる,(4)実施期間が短くなるなどの経済的利点がある.しかし,空気を吹き込むことで地下水が乱されるため,地下水や土壌ガス中の物質回収量に影響が生じる.また,汚染物質を周辺へ拡散させる危険性もある.すなわち,エアースパージング技術を効率的に実施するためには,地下環境中における異なる2つの流体(地下水と注入空気)の移動過程だけでなく,地下水中と注入空気中の物質輸送過程,および気液界面における物質の揮発過程を明らかにしておく必要がある.そこで,本研究ではエアースパージング技術が実施されている現場で長期間にわたって地下水圧力,土壌ガス圧力,汚染物質濃度を計測することで,注入空気の流路や影響範囲,空気注入による汚染物質濃度変化,および注入空気への汚染物質の揮発効果を確認し,水理学的視点から浄化対策技術の評価を行った.
|