研究概要 |
本研究では、自然環境条件下にある水分不飽和土壌を採取し、土壌間隙水中及び土壌固相表面の物質を分析し、物質分布を把握することにより、水分不飽和土壌中における物質挙動の解明を試みた。今年度は、畑土壌の未分析項目の測定を継続するとともに、水田において採取した土壌を対象に、超高速遠心分離器にて、土壌から土壌間隙水を採集した。分離条件は、8700rpm(pF4.2)で1時間を4回の場合と12000rpm(pF4.5)で1時間を3回の場合を行った。主要成分である陰イオン(Cl^-,NO_3^-,SO_4^<2->)と陽イオン(Na,K,Mg,Ca)、微量成分(Cs,Co,Cr,Zn,Sr,Sb)を測定した。 土壌間隙水の水質の分析値より、陽イオン総量と陰イオン総量の当量比等を算出した。その結果、水田土壌における間隙水の主要イオン態物質及び微量物質濃度は試料間の差がほとんどなく、遠心分離回数(時間)や加える遠心力の条件とは無関係であった。イオンバランスは1から大きくずれることはなく、間隙水の電気的中和性は保たれている。水田土壌と畑土壌の間隙水中のAlとpHを巨視的に検討した結果、pH4.5以下Al濃度が100ppb以上になるとpHとAl濃度は強い相互作用を示した。 畑土壌中のイオン交換態物質濃度と間隙水中の物質濃度の比より、分配比Rd(L/Kg)をSr,Ca(10^0〜10^2),K,Mg(10^0〜10^1),Na(10^<-1>〜10^0)と評価した。安定元素を利用した不飽和土壌中における分配比の評価手法として適用可能な方法を開発した。畑表層土壌に対する施肥の影響により、分配比が強く影響を受ける元素としてSr,Mg,Caが考えられた。多量の肥料(電解質)により、分配比の値は小さくなる傾向を示した。土壌特性値CDR(総括陽イオン分配比)と分配比Rdの相関関係を検討した結果、Sr,K,Mg,Caはよい相関関係を示し、原点を通る直線関係が得られた。Sr,K,Mg,Caについては、収着実験をせずに土壌特性CDRから分配比を推定可能であることがわかった。
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