研究概要 |
(1)梁端部の破断を伴う鋼構造骨組の地震時応答 部材端部の破断を考慮した動的応答解析法として簡易解析法および精密解析法を提案した。簡易解析法は,種々の仮定を与えることにより解析時間を極めて短縮化でき大規模骨組の解析に有効である。精密解析法は,破断時に部材レベルで生じる高周波振動を追跡することができる。両解析法を解析例を通じて比較し,解析法の妥当性を相互に検証するとともに各々の特徴を示した。梁端部の破断を伴う9層3スパン骨組の地震応答解析を行った。梁端部破断条件,地震動の種類および地震動のレベルを解析パラメタとし,各パラメタの骨組応答に及ぼす影響について検討した。破断条件に梁端塑性ヒンジの最大変形量を設定した場合と累積変形量を設定した場合では結果が大きく異なることを示した。 (2) 履歴型ダンパーの破断を伴う鋼構造骨組の地震応答 履歴ダンパーの破断を考慮できる数値応答解析法を構築し,塑性設計された12層3スパン履歴ダンパー付き骨組の地震応答解析を行った。ダンパーの破断条件をパラメトリックに変化させ,履歴ダンパーの破断が骨組応答に及ぼす影響について考察した。終局状態の履歴ダンパーの水平力分担率が0.3である骨組に,最大速度を50cm/sおよび100cm/sに基準化した地震動を入力したとき,指定した層の履歴ダンパーが弾性限で破断する場合,最大層間変形角の値が破断が生じない場合に対し1.2〜1.5倍だけ増大するという結果が得られ,この程度でおさまる理由について検討した。また,層の水平耐力における履歴ダンパーの分担率が小さい骨組では破断の影響は少なく,分担率が大きくなるにつれて破断の影響は大きくなることを明らかにした。水平力分担率が0.1と小さい骨組では,全ダンパーが弾性限で破断するとした場合でも変形が1.5倍になる程度である。
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