研究概要 |
平成9年度に芯鉄骨合成柱部材が地震荷重に対応する軸力と繰返し水平力を載荷したときの弾塑性挙動を調べ,高軸力下の芯鉄骨合成柱部材は大変形域においても曲げ抵抗力は減少するものの軸力を保持できず崩壊することがないことを明らかとし,鉄筋コンクリート(以下RC)柱の耐震補強の一つとして有効であることを示した. 本年度は昨年度の研究成果を元に芯鉄骨合成柱と鉄骨はりで構成された一層一間ラーメン骨組が地震荷重に対応する荷重を受けるときの弾塑性性状を調べることを目的とし,骨組に一定軸力と繰返し水平力を載荷する実験を行った.試験体はRC柱・鉄骨はり骨組1体,芯鉄骨合成柱・鉄骨はり骨組2体である.RC柱・鉄骨はり骨組の柱の軸力として断面圧縮耐力の30%の軸力を,芯鉄骨合成柱・鉄骨梁骨組の柱には断面圧縮耐力の30%および40%の軸力を加え,一定に保持した状態で柱頭に繰り返し水平力を載荷した.骨組の設計は3体とも柱脚部と梁端に塑性ヒンジが生じることにより塑性崩壊機構が形成されるように設計した.RC柱・鉄骨梁骨組および芯鉄骨合成柱・鉄骨梁骨組では鉄骨梁の全塑性モーメントを柱に伝えるためには,仕口部のせん断補強および支圧補強が必要であるため,本実験では6mm鋼板の塞ぎ板で接合部パネルを覆う補強を行った. 載荷実験の結果,3体とも設計どおり,柱頭と柱脚に塑性ヒンジが生じ塑性崩壊機構を形成したことから,仕口パネルの補強方法の妥当性が確認できた. 軸力比0.3程度のRC柱であれば層間変形角が4/100rad.程度までは軸力を保持できたが,柱脚部の主筋の座屈発生と共に軸力を保持できず崩壊した. 一方,芯鉄骨合成柱・鉄骨梁骨組では柱脚部での主筋の座屈が発生した後も軸力を保持でき,鉄骨梁の優れた変形能力を発揮させることができることが明らかとなった.
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