本研究は、風速が小さい室内を対象に、トレーサーガスとして臭気を、臭気センサーとしてショウジョウバエを用い、ショウジョウバエが臭気源にたどり着くまでの経路や要した時間から空気齢を推定する方法の開発を目的としている。本年度はショウジョウバエの行動を観察、記録するための実験装置および実験方法の開発を中心に開発を行った。室モデルとしての実験対象空間を作製し、それを用いた、利用しやすい臭気源の選定および、空気の流れとショウジョウバエの行動の関連を調べる実験を行った。 装置の開発については、実験対象空間部分と取り外し可能なカートリッジ状の、ショウジョウバエ導入装置を作製し、飼育したショウジョウバエを簡単に効率よく実験対象空間に導入できるように工夫した。 ショウジョウバエの移動経路および移動に要した時間の記録には、ビデオカメラとパソコンを組み合わせた方法を用いた。ショウジョウバエが実験対象空間内を移動する様子は固定したビデオカメラで撮影するが、画像を再生する際に、自作のソフトの利用により、テレビモニターに取り付けたタッチパネル上でショウジョウバエをペンで追えば、ショウジョウバエの移動の様子を時間と2次元の位置のデータとして記録できるようにした。 空気の流れがピストンフローとなる実験対象空間を用い、臭気源として種々の食品を試し、ショウジョウバエが素早く集まる臭気源を探した。臭気源までの到達時間等から、ショウジョウバエはグレープジュースやワイン等の臭気にによく反応して集まることが確かめられた。 給気口と排気口の配置が異なる実験対象空間を作製し、ショウジョウバエの臭気源への移動経路等と空気の流れとの関連を調べた。ショウジョウバエの行動は記録したが、行動には本質的に気まぐれな要素があるため、得られたデータから如何にして臭気に関する情報を引き出すかが今後の課題となることがわかった。
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