沖縄では戸建住宅の1階を全面開放した鉄筋コンクリート造のピロティ型住宅が広く普及し、居住地景観に大きな変化をもたらしている。本研究では、沖縄本島南部と久米島の12市町村を調査対象地として選定し、平成5年度より平成7年度までの建築概要書の全戸建て住宅の平面・立面・断面を縦覧・抽出し追跡調査を行った。結果184件のピロティ型戸建住宅を抽出し、住宅形式と居住者の住要求及び居住実態の調査分析を通してその成立要因と空間特性を検討した。 ピロティ型住宅配置・形態・規模やプランを規定する基本的な骨格ではRC造の特性から画一的な形式を生みだしながらも、ピロティ部分は増築対象空間として計画段階から想定されいること、内部空間は伝統型住宅のプランを踏襲したものとなっていること、接地性の欠如を広いバルコニーが補い、庭の補完として機能していること等から、居住者の住要求が反映され、個性的かつ温暖地の地域性を十分に反映したものであることを明らかにした。 しかし、計画段階における設計者とのやりとりにおいては、居住者の直裁的な住要求が設計者の建築的提案を阻害していること、明確な増改築計画が提示されずピロティ部分が長期間留保され住宅地景観が損なわれていることなどの問題点が指摘される。また、居住空間内に上下のコアが存在しないため、増築部分には上下間の動線が確保されないという問題がある。さらには周囲が都市化された場合、ピロティ部分への増改築は通風や採光の点で問題が生じることも予想される。将来の増築に関しては、当初計画の建設コスト検討の必要性や、居住者の増改築目的や時期の設定、周辺環境や法規制のクリア等が同時に指摘されるべき問題であることを明らかにした。
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