研究概要 |
2年目の本年度は,昨年度収集したデー多の整理の継続と具体的な石窟建築の特徴との関連性について考察するということが大きなテーマであった。まず,前年度から引き続き行ったデータ整理については,数多くのインドの伝統的建築基準書から特に『ブリハット・サンヒター』に着目してデータの整理および内容の検討を行った。『ブリハット・サンヒター』は従来具体的な研究対象として取り上げてきた石窟の展開していたインド中部のマールワー地方の5-6世紀の人物が著者として知られるため,実際の石窟建築の成立に極めて関係が近いと考えられたものである。その文献の整理および内容の検討に関連する成果については,後述のように, 98年度日本建築学会大会で発表を行った。もう一つのテーマである具体的な石窟建築の特徴との関連性については,今年度9月に九州産業大学で行われた日本建築学会98年度大会にて「『ブリハット・サンヒター』の記述とインドの建築空間の表現」というタイトルの発表を行った。そこでは,建築基準書というのは特に構築されたヒンドゥー寺院にのみに関係する内容ではなく,石窟建築はもちろんのこと,もっと普遍的な建築種別に共通して応用され得る内容を持ったものとして考慮すべきである点が指摘された。また本発表に関しては同書の日本語への翻訳者でもある矢野道雄京都産業大学教授に意見をいただき,更に未出版の資料の提供も含めたさらなるアドバイスを得た。加えて本研究全体の将来について,特に矢野教授の専門である言語学に関わる分野についての理解がより必要であろうとの意見を得た。また建築専門用語の抽出と整理については,単語の整理・入力が継続的になされ,その活用手法に関して更に検討を行った。先の言語学方面からの課題とともに,更に充実させるべき部分も残してはいるが,これまで曖昧な部分が多かった原文の日本語(カタカナ)読みにスタンダードを与えるきっかけともなり,今後建築の保存修復等国際協力活動の増加に伴ってインド建築の関係研究が増えると見込まれる現状に対応するものとなった。
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