研究概要 |
本研究課題は,申請者の学位論文であるシンドラーに関する研究を発展させ,リチャード・ノイトラや,彼らに続く第2世代の建築家を中心に展開されたケース・スタディ・ハウスについて,それらの空間と構成法を中心とする分析を行うことで,ロス・アンゼルス近代建築の形成及び発展過程を,特に近代的建築言語や近代的空間構成と地域性との関係に着目し,その本質と意義を明らかにすることを目的としている。 本年度は平成9年度に作成した,構成材,配置計画,平面計画,立・断面計画,そして全体のヴォリュームについての分析図をもとに,ノイトラとケース・スタディ・ハウスの空間構成を類型的に把握し,その特質とともに経年的な移行を明らかにした。さらにシンドラーに関する研究との比較検討によって,カリフォルニアの近代建築の形成と発展過程の特徴を導いた。 その結果,近代主義建築は一般に地域性を廃した表現であったことから,地域性を重んじた空間造形を主題とする現代においては批判の対象となっているが,ロサンゼルスにおける近代建築運動は,住宅を中心に,近代的な空間構成と地域性が融合された点に特色があることを導いた。さらに,このことは,現代建築の進展の可能性として提示されている「批判的地域主義」の先駆的事例と考えられることから現代的意義を有する点を明らかにし,さらにロサンゼルス近代建築が提示した住宅像は,我が国の戦後の住宅像への大きな影響を与えたが,本研究課題で,その特性を明らかした。
|