研究概要 |
1996年に我々はジェット研磨によって作成した純金薄膜を超高圧高分解能電子顕微鏡内で低温で電子線照射をすることによって、ナノサイズの異方性あるパターンが電子線の出射面側に現れることを発見している(Phil.Mag.Lett.,74(1996),167)。このパターン形成が長時間のランダムな衝突過程によるスパッタリングによって現れるために、その異方性を引き起こす原因が何によるかを明らかにすることは興味深い課題である。このことを明らかにするために我々はまず電子線の入射方位および試料表面方位依存性を調べた。その結果、パターン形成が試料表面方位と電子線の入射方位によって支配されていることが明らかになった。 また、同じfcc金属である銀および銅に関して(001)表面をもつ試料に対して110Kの温度で[001]方位から電子線照射を行うとナノサイズの溝の伸びる方位は2つの〈110〉方位に沿ってであり、金の場合とは現れるパターンが異なることが明らかとなった。一方、110Kで[011]方位から照射すると金、,銀、銅全ての場合に[100]方位に伸びる同じパターンが現れた。このような銀、銅と金の間でのパターン形成の照射方位依存性は、結晶内での衝突連鎖の違いが表面空孔の移動の異方性を引き起こしていると考えると説明することができる。
|