研究概要 |
スパッタ法を用いてアモルファスAl-Nb-Mo三元合金を石英基板上に作製し,その高温硫化および酸化環境における耐食性を評価するとともに,その耐食機構について検討した.まず,Al-Nb-Mo合金の高温硫化は二段階の放物線則に従う硫化挙動を示し,保護性の硫化物スケールが生成し,その中の拡散が律速となることがわかった.定常状態における硫化速度は初期よりも小さく,より保護性の高いスケールが定常状態では生成している.その定常状態の硫化速度はニオブやモリブデン単体よりも小さく,さらにAl-MoやAl-Nb二元合金よりも小さいことが明らかとなった.また,その硫化速度はアルミニウム量がほぼ同じ場合,モリブデンよりもニオブの割合が多いほうが小さくなることも判明した.生成した硫化物スケールの解析を行ったところ,3層からなるスケールが生成していることがわかった.最外層にはAl_2S_3があり,その下に少量のアルミニウムを含むNbS_2,そして最内層は少量のアルミニウムを含んだMoS_2とNb_3S_4からなる.初期の比較的速い硫化はアルミニウムが優先的に硫化し,より保護性の高い高融点金属の硫化物が生成する前にAl_2S_3スケールが生成し,この中の拡散が反応を律速するためである.Nb-Mo二元合金を硫化した場合もNbS_2MoS_2-Nb_3S_4の2層スケールが形成したが,この合金よりもAl-Nb-Mo三元合金の方が高い耐高温硫化性を示したことから,Al^<3+>イオンがドープされたNbS_2/MoS_2-Nb_3S_4スケールはAl^<3+>イオンを含まない同じスケールよりも保護性が高いことが明らかとなった.Al-Nb-Mo三元合金の耐高温酸化性は合金中のアルミニウム量が多くなるほど向上し,直線則から放物線則に従う酸化挙動に変化した.放物線則を示した合金ではスケール表面に保護性の高いAl_2O_3層が生成することで耐酸化性が向上し,Al-21Nb-14Mo合金ではクロミアスケールを生成する耐熱合金に匹敵する耐高温酸化性を示すした.
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