研究概要 |
第3周期遷移金属Mの組成を周期律表に沿って変化させたM:(Ti,Cr-Cu)-Al-C系におけるL1_2-E2_1相の相安定性と機械的性質を明らかにすることを目的とした.E2_1相の化学量論組成であるM:Al:C=3:1:1の合金はメカニカルアロイング(MA)後にホットプレスによる焼結により安定に得られ,これを用い実験を行った。 相安定性として,以下を明らかとした.(1)L1_2-E2_1固溶体は遷移金属の組成でCr:Mn=1:2からCu:Ni=1:2まで連続的に存在する.ただし,(Fe,Co)-Al-C系ではB2(bcc)相の相安定性が高く,高温ではE2_1相は分解しやすくなる.(2)格子定数は合金組成変化と線形関係にあるが,詳細には遷移金属原子寸法と侵入型原子濃度に依存する.(3)遷移金属元素の電子数が少ないほどE2_1相中の飽和炭素濃度は高い.(4)これらの結果を基に,多元系Brewer型状態図であるPillar Diagram上にE2_1-L1_2相存在領域を記述した. E2_1相を含む合金の機械的性質は関して,以下を明らかとした.(1)降伏応力は室温では数GPaと高くかつそれが700℃程度まで保たれる.(2)400-800℃程度で強度の逆温度依存性が見られ,特にそれは加工硬化で顕著である.(3)室温でも多少の塑性変形能を有する.(4)高温では流動応力にひずみ速度依存性を有する.結晶構造の類似性から,E2_1合金の強度の逆温度依存性はL1_2のそれと類似する機構によるものと考えられる.これらより,E2_1M_3AlC基合金は構造用材料として有望であると結論できた. 侵入型元素によるL1_2類似構造(E2_1)安定化と置換型添加元素によるL1_2安定化と比較するため,L1_2Al_3Tiと連続固溶体を形成すると思われるL1_2Zn_3TiをMAにより作製し,相安定性と機械的性質を調べた.
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