研究概要 |
少量のTi_3Al相を含む2相TiAl合金は新しい軽量耐熱材料として近年,集中的に研究されている.その凝固組織に現われる二相ラメラ組織は,破壊靭性,高温強度に優れるが,引張延性に劣る.延性,靭性のバランスのとれた機械的性質をTiAl合金に付与するには,ラメラ方位を一方向に制御する必要があり,我々はこれまでにSiを添加したTi-46Al-3Si合金で一方向凝固(DS)法を用いてラメラ方位を一方向に制御することに成功している.しかし,この合金には粗大で脆いシリサイド相が含まれて多量に含まれている.本研究では,ラメラ方位を一方向に制御したTi-46Al-3Si合金を種結晶として,それよりもSi量の少ないTi-(47-X)Al-XSi(X=0〜2)合金を種付け,育成し,ラメラ方位の制御と同時にシリサイド相の体積分率を減少させることを目的とした.Xの減少とともに減少とともに初晶がαからβ相へと変化し,ラメラ方位制御は困難となるが,いずれの合金でも方位制御,結晶の種付け育成とも可能であった.シリサイド相の体積分率は,Xの減少とともに減少する.X=0.5以下ではシリサイド粒子は全く存在しなくなる.引張伸びは,シリサイド相の体積分率の減少とともに増大する.全くシリサイド粒子の存在しないX=0.5及び0の2元系合金では60%を越える大きな引張伸びが得られた.これらの合金の降伏応力は,400〜450MPaと高く,強度,延性ともに兼ね備えている.すべての柱状晶粒のラメラ方位が凝固方向にそろっていて結晶粒間でラメラ方位が互いに回転したDS材の育成を,同様の種付け法で試みたが,2,3の結晶粒の成長が優先し,成功しなかった.
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