研究概要 |
MgO・nAl_2O_3(n=1,2.4)、α-Al_2O_3およびVまたはNiを添加したα-Al_2O_3,単結晶に200keVの電子と30keVイオン(He^+,Ov,Mg^+,Ar^+)を電子顕微鏡内で重畳照射し、照射に伴う微細組織変化を電顕内で「その場」観察した。また、6keVAr^+イオン照射によって微小格子間転位ループを導入した試料に100〜1000keVの電子を300Kにて照射し、欠陥集合体の安定性を調べた。 イオンおよび電子を重畳照射した場合に観察される格子間型転位ループの形成抑制効果をMgO・Al_2O_3、MgO・2.4Al_2O_3、α-Al_2O_3、およびVまたはNiをドープしたα-Al_2O_3において比較すると、転位ループ形成の抑制効果は定性的に、MgO・Al_2O_3>MgO・2.4Al_2O_3>VまたはNiをドープしたα-Al_2O_3>α-Al_2O_3の順になった。こうしたループ形成頻度がどのような因子に支配されて現れるのかを、この現象がイオン照射に起因する欠陥集合体の核形成頻度と電子照射下における転位ループ核の安定性の競合に基づくものと仮定して考察した。イオン照射下での欠陥集合体の核形成頻度は、MgO・nAl_2O_3系試料の方がα-Al_2O_3よりも2桁近く小さくなった。また微小格子間型転位ループを含む試料に電子照射を行うと、いずれの試料においても転位ループは消滅し、消滅速度は電子エネルギーの低下に伴って大きくなった。この結果は転位ループの消滅がはじき出し損傷に起因して形成される空孔の吸収によるものではない事を示している。また消滅速度は、MgO・Al_2O_3>>α-Al_2O_3>MgO・nAl_2O_3の順に従った。実験結果は、核形成頻度が小さく、かつその安定性に乏しいMgO・Al_2O_3において重畳照射効果が現れ易い事を示し、先に示した仮定を満足している。現在、低エネルギー電子照射下における微小転位ループ消滅機構を考察中であり、この観点からイオン・電子重畳照射効果を明らかにしたいと考えている。
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