研究概要 |
無容器大過冷凝固時における高速過渡現象を、フォトダイオードアレイ放射温度計を用いて定量的に捕え、大過冷を利用した高速結晶成長、成長メカニズムを明らかにすることを目的とする。本年度に得られた主な結果を列挙する。 1. 酸化物超伝導体の大過冷凝固過程の解明 包相温度以下に過冷させた液体からの包相相REBa_2Cu_3O_<7-x>(RE=Y,Nd,..)の直接高速成長は、RE=Nd,Pr,Sm,Euでは見られたが、RE=Y,Er,Ybでは見られず、これは123相でのRE-Ba置換の有無と対応しており興味深い。初期液体組成依存性は、総じてCu rich側にて123相の体積率が100%近くまで上昇し、Cu poor側では、従来の凝固でも大変稀な、123相と高温相(211等)との包相系でのCoupled glowthがみられた。このCoupled growthを解明するために過冷液体中の準安定液相線を用いた新しい理論を提案した。この理論は測定された速度と界面温度に合うだけではなく、従来の凝固の包相系における様々なcoupled glowth理論と実際との不一致の幾つかを説明する。 2. 半導体における大過冷凝固過程の解明 Geの大過冷凝固においては、過冷度ΔT=300K程度で沿面成長から連続成長への遷移があり半導体特有の現象と報告されていたが、本研究における高速で精密な温度測定等により、これは誤報であり、広い過冷度範囲でSiやGeの凝固は、熱拡散支配のデンドライト成長によるリカレスを伴う第1過程と、融点付近でのゆっくりとした沿面成長の第2過程からなることが解った。この成果は学問的興味のみならず、球状半導体産業のキー技術としても注目されている。またSiにおける上記第1過程は、予想より遥かに高速かつ微細で、凝固初期における準安定相やアモルファス相の関与も示唆される。 3. 半導体,セラミックスにおける最大過冷度の測定と大過冷凝固機構の解明 上記以外に、Si-Ge系、Y_3Al_5O_<12>,Y_3Fe_5O_<12>ガーネット系、の無容器凝固実験を行った。詳細は省略するが総じてSi-Ge系では熱拡散支配、123またはガーネット系では核生成と組成拡散が支配している凝固機構が明らかになった。
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