研究概要 |
本研究は,熱分解反応が進行しない低温域で架橋切断量を測走可能な解重合法として,酸素酸化法を提案し,酸化並びに解重合特性を明らかにした上で,この方法を架橋切断量と低分子生成量の関係を定量する方法として確立することを目的とする.昨年度の実験結果から,酸素酸化において,褐炭中の芳香族環が選択的に酸化され,消去されると同時に,環に結合していた脂肪族架橋は末端に芳香族炭素由来のカルボキシル塞を持つ隣接環側鎖に変換されることが示唆された.これを踏まえ,本年度は,まず酸化による褐炭炭素形態分布を解析し,カルボキシル基生成量は消去された芳香族環に結合していた架橋数と同一であることを明らかにした.次いで,消去された芳香族環量と生成カルボキシル基の関係は,隣接する2つの環がいずれも消去されることはない,という条件付きながら,格子点(サイト)消去による格子の崩壊過程として定量的に記述可能であることを示した.さらに,実験的に得られた解重合特性を記述可能な格子モデル構築を試みた.格子モデルが妥当であるための必要条件は,(1)格子消去率,(2)溶剤可溶成分と定義される非網目成分分率,(3)非網目成分の分子量分布の関係および(4)格子点消去数とボンド(架橋)消去数の比を2.1〜2.2(実験値)を満足することとした.試行錯誤の結果,対象としたMorwell褐炭を,15%の非網目低分子成分と85%のベーテ格子型網目成分(初期格子占有確率=1,配位数2.1)の混合物と仮定することによって,上記の必要条件を満足する解重合シミュレーションをすることができた.以上のように,本年度の成果によって,架橋切断量を定量可能とする解重合法を確立し,さらに,解重合特性を統計格子モデルによって説明するという本研究の2つの目的をいずれも達成することができた.
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