研究概要 |
電気透析法による表面処理廃水のクローズド化に関する研究を行うにあたり,今年度は通常の電気透析法で用いられる陰イオン交換膜の代わりに,ポリスルホン,テフロンなどの膜内に荷電を有しない中性膜を用いた電気透析システムを組み半田メッキ溶液の回収実験を行った。実験は,実際の廃水を想定した市販半田メッキ浴(メタンスルホン酸鉛,メタンスルホン酸錫-メタンスルホン酸溶液)を用い,1次洗浄水,2次洗浄水などを想定した種々の濃度の下で行った。 市販のテフロン,ポリスルホンなどの中性膜を用いて模擬廃水の電気透析を行ったところ,メタンスルホン酸は,従来の陽・陰イオン交換膜を用いた電気透析システムで脱塩を行った場合と同様に陽極側へ透過した。しかし,運転に要する電圧は,陰イオン交換膜を用いた場合よりも大幅に高くなることが明らかになった。これは,用いた中性膜の電気抵抗が高いことに起因するものと考えられる。そのため,運転に要する電圧を低下させるためには,電気抵抗が低い中性膜を用いることが不可欠であると考えられる。しかし,中性膜を用いた場合においても,昨年得られた市販の陽・陰イオン交換膜を用いた通常の電気透析の結果と同様に,メタンスルホン酸の一部は陽イオン交換膜をも透過する結果を得た。また,陽イオン交換膜を透過するメタンスルホン酸の膜透過速度は,電流密度に比例して増加し,メタンスルホン酸が見かけ1価の陽イオンとして陽イオン交換膜を透過するという新しい事実が明らかになった。 この現象をさらに明らかにするため,陽イオン交換膜1枚からなるドナン透析装置を用いて透析実験を行ったところ,メタンスルホン酸は電気的中性条件を保ちながら陽イオン交換膜を透過することが明らかになり,新たなシステムの構築の可能性があることが示唆された。
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