研究概要 |
本研究では、炭化珪素/炭素傾斜機能材(FGM)の母材部分と表面層を連続して気相合成することにより、組織の連続化をはかり、耐剥離性を向上させることを目指した。本年度の主な成果は以下の通りである。 1. 化学気相成長法による炭化珪素ならびに炭素の共成長の速度解析 炭素原料として,プロパン,エチレン,ベンゼン,m-キシレンを用いて,熱分解炭素の成膜実験を行なった。また,これらの原料とジメチルジクロロシランを同時にCVD装置に供給して珪素含有炭素膜の成膜実験を行った。各原料について,成膜反応速度定数を求めたところ,炭素の単独成膜ではベンゼンからの成膜反応が最も速いことが明らかとなった。また,プロパンで認められた,ジメチルジクロロシラン添加による成膜の促進効果がベンゼンの場合には観察されないことがわかった。 2. 繊維強化傾斜機能材の特性評価 温度勾配化学気相浸透法(CVI法)による傾斜機能材製造実験を行った。炭素繊維織物プリフォームを直接CVD反応により高密度化するには長時間を要することが明らかとなったため,フェノール樹脂を炭素繊維織物プリフォームに含浸,炭化し,予め高密度化してからCVIを行なうことにより,製造時間を短縮した。含浸の際に微細な細孔構造を残しておき,この細孔部分への炭素CVIと表面の組成傾斜層ならびに炭化珪素層のCVDとを一貫して行なうことにより,耐剥離性に優れたFGMを合成することに成功した。 3. FGM製造プロセスの反応工学的モデリングと数値シミュレーション FGMで最も重要な組成傾斜層の製造プロセスについて,原料組成と得られる膜組成ならびに膜成長速度の関係を定式化し,共成膜の数値シミュレーションを行なった。計算結果は実験で得られた膜中の組成分布を良好に再現することができ,任意の組成分布をもつ傾斜層を作製するための原料組成の経時プロファイルを決定することが可能になった。
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