研究概要 |
cone構造を有し、lower rim側のdistal位にスペーサー長の異なった3種類のカリックス[4]アレーンカルボン酸誘導体(酢酸-酢酸、酪酸-酢酸、及び吉草酸-酪酸)による金属イオンの抽出をNa共存・非共存下で行った。酢酸-酢酸型、及び酪酸-酢酸型抽出剤について、Na共存系での金属イオンとの錯体の化学量論をローディング試験により決定した。酢酸-酢酸型抽出剤では、Pb以外の金属イオン(Na,Ca,Ba,Y,La,Ce,Pr,Nd,Sm,Eu,Gd,Ho,Er,Yb,Cr,Mn,Fe,Co,Ni,Cu,Zn,Ag,Cd,Al,In)はNaと共抽出されることが分かった。PbはNaと同様、酢酸-酢酸型抽出剤と2:1錯体を形成し、また、Pbの配位部位はNaと同じであるため、Naとは競争反応を起こす。このため、PbはNaとの"イオン交換機構"により、抽出される。また、酪酸-酢酸型抽出剤では、Ag以外の金属イオン(Na,Ca,Sr,Y,La,Ce,Pr,Nd,Sm,Eu,Gd,Dy,Ho,Er,Yb,Cr,Mn,Fe,Co,Ni,Cu,Zn,Cd,Al,In,Pb)はNaと共抽出されることが分かった。また、Cuの抽出に関して、共存Naの濃度が0.05Mでは非共存系よりも抽出が促進されるが、それ以上の濃度では次第に阻害が起こった。しかし、スペーサー長が長くなることで、NaとCu間の立体反発が解消され、また、第2のカルボキシル基の解離定数が小さくなった。このため、高Na濃度でも、Naとの競争反応による阻害を受けにくい。すなわち、吉草酸-酢酸型抽出剤では、0.5MのNa存在下でもNaの競争反応による阻害を受けにくく、海水中などでの利用に応用できると考えられる。また、酢酸-酪酸型抽出剤については多孔性樹脂に含浸したイオン交換体として用いても、Na添加系で抽出性能が向上することが確認された。
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