研究概要 |
ホスホジエステラーゼを有機溶媒中でエステル交換反応の触媒として用いるために,酵素および基質の選択など,素反応の最適化を検討した。具体的には以下の方法によって研究を進めた。エステル交換反応に用いるホスホジエステラーゼとしては,5'-ヌクレオチダーゼ(venom)のヌクレアーゼを検討した。これを触媒とした場合の有機溶媒中での安定性および反応性を調べるために,モデル基質としては5'-ヌクレオチダーゼの加水分解反応の非活性基質でもあるビス4-ニトロフェニルホスファート,および,反応によって光学活性体を得ることを目的としてベンゼンビス4-ニトロフェニルホスホロチオアートを用いた。またアルコールとしてヌクレオシドの5'位および3位'の水酸基を想定し,イソブチルアルコールおよびイソプロピルアルコールを作用させエステル交換反応を行なった。有機溶媒としては,有機溶媒中での酵素反応に一般的に用いられるヘキサン,トルエン,アセトニトリル,クロロホルム,ジメチルスルホキシドを用いた。評価法として,生成物の高速液体クロマトグラフィーによる生成物の分離を目指した。結果として,エステル交換成績体を得ることができたが,十分な変換率を達することはできなかった。また,酵素が触媒に関与することで,光学活性体を得られることを期待したが,これについても良好な結果を得ることはできなかった。本研究で用いた5'-ヌクレオチダーゼ(venom)が,いずれの有機溶媒中でも十分な安定性を保つことができないことが原因であると考える。以上の研究に加えて,ホスホトリエステラーゼによるエステル交換反応,および加水分解による光学分割等の研究では目的とする成果が得られた。
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