研究概要 |
モレキュラーインプリンティング法(以下、MI法)は、認識対象分子に対してテーラーメイド的に分子認識材料を合成する方法である。しかし、これまでMI法で合成されたポリマーは疎水性を示すため有機溶媒系でのみの合成及び分子認識能の評価しか行われず、そのため認識対象とする分子も非常に限定されていた。本研究では、水系においても利用可能な分子認識材料の開発を目的として研究を行った。この目的のため、MI法で高分子を合成する際にメタクリル酸2-ヒドロキシエチル(以下、HEMA)という水酸基を持つモノマーを加えて重合することにより高分子に親水性を付与し、水系において利用することを検討した。 1) 生体を構成する単糖の一つで、細胞間情報伝達や細胞接着など生体内において重要な機能を担っているシアル酸を認識するポリマーをMI法により合成した。シアル酸に対する選択性を向上させるために、シアル酸のカルボキシル基とシスジオール基とそれぞれ相互作用可能な機能性モノマーの、N,N,N-トリメチルアミノエチルメタクリレート、p-ビニルベンゼンホウ酸を用いて2点で認識可能なシアル酸インプリントポリマーを合成し、分子認識能の評価を行った。 2) 合成したポリマーをマイクロチューブに分注し、バッチ法により結合能の評価を行ったところ、シアル酸インプリントポリマーはpH8.0という生体における環境とほぼ同じ条件において、シアル酸に対して高いアフィニティーを示し、選択性もみられた。一方、HEMAを加えずに重合したシアル酸インプリントポリマーはシアル酸に対するアフィニティーが非常に低くなった。このことからHEMAを加えることにより、含水溶媒中においても相互作用可能な環境が付与されたためであると考えられる。
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