研究概要 |
水溶性高分子であるポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)(PNIPAAm)はその下限臨界温度(約32℃)以上で水に不溶となり、ゴムのような高分子の沈澱(凝集相)を形成する。疎水性金属キレートであるトリス(8-ヒドロキシキノリノラト)金属キレートは高分子水溶液に安定に可溶化され、高分子の沈澱とともに小さな体積を占める凝集相へ取り込まれた。高濃度の金属キレートを含む凝集高分子相は少量の極性有機溶媒に再溶解させることができた。高い濃縮率の結果、原子吸光法による飲料水中のコバルトの定量が可能になった。非電荷キレートとは対照的に負の電荷を持つ金属キレートであるビス(バスクプロインスルホン酸)銅(I)キレートや5,10,15,20-テトラキス(4-カルボキシラエニル)ポルフィリン金属キレートは凝集相にほとんど抽出されなかった。しかし、適当な種類や濃度の第四級アンモニウムイオンが対イオンとして存在するとよく抽出されるようになった。これらの金属キレートを定量的に凝集相へ捕集ずるための対イオンとしては、n-ドデシルトリメチルアンモニウムイオンが最も優れていた。再溶解した凝集相はマイクロプレート上に載せたり、逆相高速液体クロマトグラフィーの水-極性溶媒からなる移動相に直接導入することが可能であった。非常に簡単で迅速な前濃縮操作によって、マイクロプレートリーダーを用いる吸光光度法でサブ-ppbレベルの、HPLCの可視検出でサブ-pptレベルの金属キレートの検出が可能となった。
|