研究概要 |
これまで、遷移金属で置換したスピネル型リチウムマンガンLiM_yMn_<2-y>O_4(M=Cr,Co,Ni,Al,Mg)のリチウム二次電池正極がサイクル特性が良好であることを報告してきたが、その詳細な結晶構造・物性・電気化学的特性については不明が部分が多い。そこで、本研究においては、LiM_yMn_<2-x>O_4(M=Cr,Co,Ni.Al,Mg)を合成し、これら物質の構造あるいは化学拡散係数に対する依存性を解明することを目的とする。昨年度、Cr,Co,Niで置換を行ったものについては置換量が増加するにつれてリチウムの化学拡散係数が増加することを報告した。本年度は、AI,Mgで置換した物質について、リチウムの化学拡散係数の挙動について報告する。 試料の合成については、炭酸リチウム、炭酸マンガンおよびほかの金属の炭酸塩、水酸化物、シュウ酸塩などの塩を所定の金属比で混合し、これをアルミナボート上で400℃で熱分解を行ない、その後、750℃で3日間焼成を行なった。合成した試料の相同定はCuKa線を用いた粉末X線回折により行なった。また、ICPによる組成分析の結果、ほぼ仕込み組成に等しいことを確認した。そして、合成を行なった試料、導電材のアセチレンブラックおよび結着材のPTFEを75:20:5の重量比で混合し、フィルム状に圧延した電極について、電流パルス緩和法により化学拡散係数の算出を行なった。なお計測は電流密度0.5mA/cm^<-2>のパルスを10秒間印加し、その後の電位の径時変化を10分後までデジタルマルチメータで計測することにより行なった。 LiAl_yMn_<2-y>O_4については、LiMn_2O_4の拡散係数がlog(D/cm^2s^<-1>)=-9.5となるのに対して、log(D/cm^2s^<-1>)=-8.5というようにAl組成yが増加するにつれ、化学拡散係数が上昇した。このような結果は、前年度得られたLiCr_yMn_<2-y>O_4,LiCo_yMn_<2-y>O_4の結果と一致する。また、LiMg_<1/6>Mn_<11/6>O_4についてはLiMn_2O_4より化学拡散係数は上昇したが、酸素不定比を有するLiMg_<1/6>Mn_<11/6>O_<3.97>の化学拡散係数はLiMg_<1/6>Mn_<11/6>O_4に比して1桁程度低下が見られた。これは、酸素不定比を有する物質は、密度測定の結果金属過剰であることが判明し、その過剰となった金属イオンがリチウムイオンの拡散経路である16cサイトの一部を占有するため、リチウムイオンの拡散を阻害し、化学拡散係数が低下したものと考えられる。
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