研究概要 |
本研究では、二重層状銅酸化物La_<2-x>Sr_<1+x>Cu_2O_6(Sr系)を新たに合成し、そのNO吸収脱離特性を詳細に検討した。われわれがこれまで報告しているLa_<2-x>Ba_xSrCu_2O_6(Ba系)のNO吸収特性との違いに着目し、固体構造および物性との相関を明らかにした。Sr系のNO吸収量および吸収速度(250℃)は、酸素欠陥の配列に起因する斜方晶超格子の生成に伴って増加し、x=1.4で最大値を示した。XRDおよびFT-IR測定によると、NO吸収はインターカレーションではなく、硝酸塩・亜硝酸塩の形成によって進行する。吸収後の試料を加熱すると,370、450および530℃にNO脱離ピークを与えるが、N_2の脱離はほとんど認められない。すなわち、Sr系では可逆的にNOが脱離する。また、水蒸気存在下、試料に1%NOを供給しながら、吸収温度(250℃)と脱離温度(500〜700℃)との間で温度スウィングを繰り返したところ、50サイクル以上にわたって安定したNO除去と放出が繰り返されることが分かった。以上の結果、二重層状銅酸化物La_<2-x>M_xSrCu_2O_6(M=Ba,Sr)はいずれも置換に伴って生じる規則的酸素欠陥構造において、高いNO吸収性を示すことが明らかになった。Ba系が層間へのインターカレーションによってNOを格子内に取り込むのに対して、Sr系は硝酸塩もしくは亜硝酸塩の形成によってNO吸収を引き起こす。吸収NOのN_2としての解離的放出はBa系についてのみ認められ、インターカレーションに特有の現象である。このようなNOに対する異なる反応性はアルカリ土類元素の塩基性とイオン半径に依存すると推定される。BaはSrに比べて強い塩基性を示すため、NOとの反応性に富む。また、アルカリ土類元素はCUO_5層間に位置するため、イオン半径の大きいBaはより大きな層間距離を生じる。このため、NOインターカレーションを引き起こす上での立体的障害も比較的小さいことが予想される。
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