研究概要 |
本研究課題では、新規光学活性カチオン性界面活性剤を合成したのち、この新規光学活性界面活性剤の電解反応系への添加による生成物分布、特に光学収率の変化について検討する。 1. 新規光学界面活性剤の合成 まず、出発原料に光学異性体(アミノ酸、プロリノール、スチレンオキシド)を用いることによりアミン上の置換基に不斉炭素をもつ新規4級アンモニウム型光学活性界面活性剤を合成した。これらの界面活性剤については、原料の立体配置が保持されており、簡単に光学活性な界面活性剤を得ることができた。つづいて、窒素原子上に不斉中心を持つ4級アンモニウム型界面活性剤で、窒素原子上に異なる4つの官能基(ラウリル基、イソプロピル基、メチル基、ベンジル基など)を導入したものを合成した。この界面活性剤はラセミ体として得られるため、今後光学分割が必要である。 2. 有機電解反応 有機電解反応系には、4級アンモニウム型カチオン性界面活性剤の添加によって生成物分布が変化するアセトフェノンの電解還元反応を選んだ。この電解還元による生成物1-フェニルエタノール(Pe)と2,3-ジフェニル-2,3-ブタンジオール(Db)には、ともに光学異性体が存在する。新規界面活性剤を添加したところ、PeとDbの生成比が変化し、生成比Pe/Dbが最大で24になった。また、Peの光学収率が変化し、エナンチオ過剰率が最大で30%となった。これらのことより、カチオン性界面活性剤と反応中間体とが非常に近い位置で相互作用していることが分かった。今後、界面活性剤の官能基を変化させることによって、より高い光学選択性が得られると考えられる。
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