研究概要 |
N-トシル-4-ビニリデン-2-オキサゾリジノン(アレニルアミン)をオレフィン類と加熱反応すると多様な形式の環化付加反応が進行した。スチレンやアクリル酸エステルと80℃で反応させるとアレンの末端C=C結合と[2+2]の環化付加反応が進行しシクロブタン誘導体を与えた。スチレン-d_<-8>やcis-スチレン-d_1と反応すると1種類の異性体がそれぞれ得られた。フェニルアセチレンとの反応も同様な選択性を示し、シクロブテン誘導体を単一生成物として与えた。本反応はアレンとオレフィンが加熱条件下で位置及び立体選択的に[2+2]の環化付加反応を起こしたはじめての研究例である。 ビニルエーテル類と反応すると反応挙動は劇的に変化した。エチルビニルエーテルやジヒドロピランと反応すると原料の窒素原子上のトシル基が1,3-転位反応した後に、ヘテロDiels-Alder反応を行なったと思われるl,2,3,4-テトラヒドロピリジン誘導体を与えた。β-methoxystyrene(E:Z=1:17)との反応ではcis体を選択的に与え、methyl methoxyacrylate(Z:E=1:>99)との反応ではtrans体のみを与えた。本反応も加熱条件下で位置及び立体選択的に進行していることがわかった。シリルエノールエーテルやアリルシランを用いても同様の反応が進行する。つまり、電子供与性のオレフィンの場合に本形式の反応が進行することが明らかとなった。ニトリルオキシドと反応を行うとアレンの内部C=C結合と[3+2]環化付加反応を行い、1,2-オキサゾリン誘導体を選択的に与えた。以上のようにN-トシル-4-ビニリデン-2-オキサゾリジノンは様々なオレフィン・アセチレン・1,3-双極子化合物に対して特異な反応挙動を示し、新規複素環合成法の基幹中間体として有用な化合物である。
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