研究概要 |
平成9年度は、Pt(PPh_3)_4触媒を用いるアルコキシジホウ素化合物の共役ジエン類への1,4-付加反応を報告した。平成10年度は、ホスフィン配位子を持たないPt(dba)_2触媒存在下でのジホウ素化について調査を行い、反応が1,4-付加ではなくジエンの二量化を伴う1.8-付加あるいは1,2-付加で進行することを見いだした。 1. Pt(PPh_3)_4に比べてPt(dba)_2は触媒活性が高く、前者の反応が加熱(80℃)を必要としたのに対し、後者の反応はトルエン中室温で速やかに進行し、対応するジホウ素化体を収率良く与えた。 2. ジホウ素化合物としては、入手容易で取り扱いやすいピナコールエステル誘導体の利用が可能である。また、ジホウ素化体も空気中で安定であり、単離・精製が容易である。以上のことは、本反応が一般的な有機合成反応としての使用に充分耐えうることを示している。 3. 本反応は、基質の構造によりその様式が大きく変化する。内部置換型であるイソプレンの反応は、ジエンの二量化を伴った1,8-付加で進行する。その際、メチル基に近いジエン末端同士で二量化したE,E体のみが選択的に得られた。無置換型である1,3-ブタジエンの反応も同様の様式で進行する。一方、末端置換型である1,3-ペンタジエンの場合は、立体障害の少ない二重結合での1,2-付加反応が進行した。 4. Pt(PPh_3)_4触媒を用いた場合と同様、本反応もジホウ素化合物のゼロ価白金錯体への酸化付加、共役ジエンのホウ素-白金結合への挿入、およびジホウ素化体の還元脱離を経由して進行すると考えられる。1,8-付加体の生成は、dbaの白金への配位力が弱いために二分子のジエンが配位、挿入してビス-π-アリル白金錯体を形成した後、還元脱離すると考えることで説明できる。1,2-付加体は、反応がπ-アリル白金中間体を経由することなく進行するために得られたと考えている。
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