研究概要 |
本研究者は、水に不溶のポリ(2-ビニル-4,6-ジアミノ-1,3,5-トリアジン)(PVDAT)が水溶液からチミンとウラシルを選択的に認識・分離することを見出し、これがジアミノトリアジン残基との相補的水素結合の形成に基づくことを分光学的な手法で明らかにした。高分子場が形成する疎水場は水溶液中だけでなくアルコール中でも有効であり、メタノール中でも相補的水素結合形成によってチミンとウラシルを認識・分離した。またメタノール中ではスタッキング相互作用など疎水相互作用が強く働かないため、相補的水素結合の数に基づく基質選択性は水中よりも高かった。 さらに高分子場が上記のような不均一系ではなく、均一水溶液系でも有効に疎水場を形成して基質との相補的水素結合が可能となるか検討した。ジアミノトリアジン残基を持つ水溶性高分子は、2-ビニル-4,6-ジアミノ-1,3,5-トリアジンをアクリルアミドと共重合させることで得られた。上記共重合体は、均一水溶中でもチミンを選択的に認識することが、限外ろ過膜を使用した透析実験より判明した。またH-NMR測定より、チミンのイミドプロトンのみが共重合体の存在下で低磁場シフトしたことから、チミンの認識が相補的水素結合に基づいていることを明らかにした。一方対応するモノマーでは、チミンとの相補的水素結合の形成は全く認められなかった。以上より、高分子場が均一水溶液中でも水素結合形成に有効なことが明らかとなった。
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