本研究では、前年度において電解重合による有機EL素子の検討を行い、ドーピング法が、素子の低抵抗化に有効であることを見出した.しかしながら、電解重合法では、(1)低抵抗に伴い膜の蛍光収率が大幅に低下すること、(2)nmオーダーでの膜の均一性に欠けること、さらに、(3)使用可能なモノマー材料に制限があることなどの問題点を見出し、新たな展開が必要とされた. そこで本研究では、より材料の選択の幅が広く、均一な製膜が可能なスピンコート法について検討を進めた.特にホール輸送層のドーピング効果について検討を行い、トリフェニルアミンを骨格とするホール輸送性ポリマーとアンチモン化合物の錯体が、従来にない高い導電性を示すことを見出した.さらに、素子構造を、多層構造化することで、導電性と蛍光性の両立を図ることができた.これにより、従来では不可能であったミクロンオーダーの厚膜を有する有機EL素子(DOLED)の構築に成功した.この新規デバイス構造は、厚膜有機層を有するために、製膜が容易であること、素子の作動が安定している特長を有し、さらには、今後、厚膜を利用した新規発光デバイスへの展開が期待される.
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