研究概要 |
本研究では,(1)人工環礁の実地調査,(2)生態系モデルのレビュー,(3)人工環礁域生態系モデルの構築,を行った.以下にその概要を示す. (1) 人工環礁の実地調査 大阪府泉佐野市のりんくう公園内にある人工環礁において,水質,海藻の植生分布を中心とする毎月の調査,および底質,沈降物,浮遊生物,付着生物,遊泳生物を中心とする四季の総合調査を行った.その結果より,海藻の光合成作用を基礎とする生態系の物質循環が海水の溶存酵素や栄養塩濃度に大きく影響を与えていることなど,水質浄化機能に及ぼす生態系の役割をある程度明らかにした. (2) 生態系モデルのレビュー 従来行われてきた国内での生態系モデルに関する研究のレビューを行い,生態系モデルが,物理・化学的物質循環を基礎とする富栄養化モデル,プランクトンによる物質循環まで含めた浮遊生態系モデル,底泥の化学的物質循環とベントスによる物質循環を含めた底生生態系モデル,ある個体群の生物量と分布の変化を表す個体群動態モデル,などに分類できることを学ぶとともに,浮遊生態系モデルおよび底生生態系モデルの基本的な構築方法を学んだ. (3) 人工環礁域生態系モデルの構築 既存の生態系モデルの構築方法を基礎として,浮遊生態系モデルと底生生態系モデルとを組み合わせた人工環礁域生態系モデルの構築を行った.また,実地調査から得られたデータを用いていくつかの生物パラメタを導出し,これらを組み込むことによって対象海域に適応した生態系モデルを開発した.さらに,この生態系モデルを用いた数値実験を行い,人工環礁内の物質循環の定量的な評価を行うとともに,底泥食性動物を対象としたバイオマニピュレーションによる水質浄化効率の向上が可能であることを示した.
|