研究概要 |
多くの高等植物のミトコンドリアにおいて保存されたプロモーターモチーフが見つかっており、同様の配列がイネミトコンドリアにおいても様々な遺伝子のプロモータとして機能していることが示されている。イネミトコンドリアorf483,rrn26,trnfMといった遺伝子は、この保存されたプロモーター配列を用いて単一の転写開始点から転写されている。しかしながら、イネミトコンドリアatpl及びnad9遺伝子の転写開始点は複数存在し、それぞれ保存されたプロモーター配列を持つものとDNAの1次構造に特徴を見いだせないものとがある。この現象を説明するためにDNAの高次構造に着目し、イネミトコンドリアDNAにおいて、原核生物で転写調節因子としての機能が示唆されているDNAの湾曲構造の検出を2次元電気泳動法を用いて試みた。この結果、予想された通り、atp1,nad9両遺伝子の上流領域中にDNAの湾曲構造を検出した。一方、1つの転写開始点のみを持つ6つの遺伝子(orf483,trnfM.rrn26,rrn18,atp9,nad3)についても同様の解析を行った結果、どの遺伝子の上流領域中にも湾曲構造は検出されなかった。また、湾曲構造が検出された領域中において、パーミューテーション解析法により湾曲中心位置を決定した結果、atp1,nad9両遺伝子ともにCRTAプロモーターモチーフの約20bp下流に湾曲中心が位置していた。また、イネミトコンドリアatp1遺伝子のコード領域中においても湾曲構造の検出を行った結果、この領域中にDNAの湾曲構造が検出され、湾曲構造のプロモーター領域への局在は示されなかった。しかしながら、1つの転写開始点のみを持つ遺伝子の上流領域中には湾曲構造が検出されなかったこと、また、atp1,nad9遺伝子問で示されたプロモーター領域中におけるDNAの高次構造上の類似性は、イネミトコンドリアにおいてDNAの湾曲構造が何らかの転写調節機能を持っている可能性を示唆すると考えられた。
|