研究概要 |
今年度はオオムギ属倍数種(四倍種および六倍種)について二種類のリポソームRNA遺伝子、5Sおよび18S-25SrDNAの物理マッピングを行い、オオムギ属倍数種の系統進化の解明を試みた。rDNAのパターンから以下のことが結論される。(1)栽培オオムギと同じゲノムを持つとされるH.bulbosumの四倍体は同質四倍体である。(2)Yゲノムを持つH.murinumの六倍体は四倍体と二倍体のサイトタイプの交雑によって成立したと考えられる。 (3)Xゲノムを持つH.marinumの四倍体は単純な同質四倍体ではなく、部分異質四倍体である。(4)四倍種のH.capense,H.secalinumおよび六倍種のH.brachyantherum6xにはXゲノムが含まれる。(5)北アメリカ大陸に分布するH.jubatumは5対の染色体にrDNAのシグナルを持ち、アジア大陸のH.roshevitziiとH.brachyantherum2xの交雑によって成立したと推定される。また、中央アメリカに分布するH.guatemalenseおよび南アメリカ大陸に分布するH.fuegianumはH.jubatumに近縁と考えられる。(6)北アメリカ大陸に分布するH.depressumは4対の染色体にだけrDNAシグナルを持ち、二倍種のH.intercedensとH.pusillumの交雑から起源したと推定される。(7)北アメリカ大陸の六倍種であるH.arizonicumはH.jubatulmとH.pusillumの交雑に由来すると推定される。 従来オオムギ属は二倍体に見出される,H,I,XおよびYの4基本ゲノムに対応する4グループに分類されていた。しかし、本研究から、HゲノムとXゲノムを併せ持つ第5のグループが存在することが実証された。さらに、これまで推定困難であった倍数種の祖先種についてもかなり明確に推定することができた。これらのことから、rDNAはオオムギ属の系統進化を解明するのに有用な染色体マーカーであると結論される。
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