研究概要 |
(1)圃場実験: 東京大学農学部附属多摩農場の酸性火山灰土の畑において、japonica,indica,tropicaljaponicaの陸水稲、約30品種を栽培し、標準区と、小麦栽培並みの石灰を施用した区のを設けて生育を比較検討した。石灰を施用した区では、茎葉部の生育が劣った。草丈やSPAD値で評価した石灰耐性は、平成9年度の試験結果とほぼ同様で、穂重型のtropical japonicaの陸稲品種でやや優っていた。これらの品種は深根性であり、石灰による土壌pH上昇の少ない土壌深層部での鉄吸収が容易であることが、一因と考えられた。なお、国内の品種に限られるが、農家での聞き取り調査や農家圃場の土壌pHの調査を若干、行なった。 (2)画像解析法による根のpH調節能力の評価: 本研究の備品費により、昨年度購入したパーソナルコンピューター一式で、イネの根を静置したpH指示薬入り寒天培地の色の変化を定量的に判別し、品種間の比較や、根の部位別のpHの違いを評価することを試みた。画像解析システムの精度向上については、名古屋大学農学部作物科学研究室の研究者らの助言をえた。これにより評価したpH調節能力(=酸性化能力)の品種間差異だけでは、圃場試験の結果をすべて説明することはできそうにない。このことは、上述の通り、根系全体としての分布の深さなど、幼植物の根の単位量当りでの生理的機能だけでは説明できない、機能形態学的な適応機構が同時に働いていることが一因と考えられる。ただし、品種交雑などにより、こうした深根性品種に、pH調節能力をもつ品種の遺伝子を組み込むことでいっそう土壌pH上昇への耐性を高められる可能性はあり、今度も研究を発展させたいと考えている。
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