研究概要 |
圃場に接種したアーバスキュラー菌根菌(以下,AM菌)を夏作物の栽培終了後も維持し翌年以降も接種源として利用するため以下のことについて検討した. 種々の作物導入後のインゲンマメの生育の違い 冬季にオオムギやエンドウを栽培すると裸地より翌春におけるAM菌胞子数が多くなった.その結果,冬作物を導入したほうが後作インゲンマメの生育が優れた.冬作物を栽培して維持したAM菌を後作インゲンマメの栽培に接種源として利用した場合,インゲンマメの生育は,AM菌をインゲンマメの播種時に接種した場合と差がなかった.以上のことから,冬作物の栽培によりAM菌の密度は維持され,これをAM菌接種源として後作にも利用できることが明らかになった. 種々の作物の根から浸出する糖・アミノ酸量 単位根長当たりに浸出する全糖・全アミノ酸量はマメ科やユリ科作物で多かった.このことからマメ科やユリ科作物は他の作物に比べAM菌がよく感染すると推察された.従って,接種源維持のために導入する冬作物はマメ科やユリ科作物がよいと考えられた. 土壌水分や地温を制御した栽培技術が土壌中の胞子数におよぼす影響 AM菌胞子を土壌水分や地温の異なる条件下で貯蔵した場合,生存胞子数は高土壌水分,低温下で多かった.このことから冬季に圃場の土壌水分を高くしたり地温を低くすれば生存胞子数が多くなると考えられた. 以上のことからマメ科やユリ科などの冬作物を導入すれば翌春までAM菌の密度が維持され,新たにAM菌を接種しなくても後作インゲンマメの栽培ではAM菌接種時と同様な生育促進効果が得られる可能性が示唆された.
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