研究概要 |
〈植物の生育状況〉緩速砂ろ過を組み込んだ循環型NFTシステムにおいて,トマト植物は当初順調に生育したが,徐々に新葉の黄化 が現れ,微量元素を添加すると回復した。このことから,NFTなどの無培地の栽培系にて養液を連続ろ過する使用法では,微量要素欠乏 を引き起こしやすいことが示された。 〈EC,pH,DOに及ぼす影響〉緩速砂ろ過による養液ECへの影響は小さく,EC制御は可能であった。一方,養液pHへの影響は大き く,養液タンクpHを変えてもろ液pHは常に7前後に維持された。これはろ過砂のpH緩衝作用によると思われ,pH急変回避のメリットと なる一方,pH制御は困難であった。溶存酸素はろ過により10〜30%減少したが,根部への酸素供給には問題なかった。 〈各元素のろ過前後の濃度変化〉湛水層に液肥を追肥した時の,ろ液中の濃度上昇パターンは各元素ごとに異なった。NO_3-N,Mgは ろ過による影響が最も少なく,K^+は砂粒子表面のCa^<2+>とイオン交換され,Fe,Pは砂層移動中に何らかの生物的作用を受けている可能性 が示された。NH-Nは大部分が生物的に酸化されたと考えられた。Mnはろ液中にほとんど検出されず,トマト黄化症状の原因はMn欠乏 である可能性が高まった。 〈除菌率〉緩速砂ろ過により,Fusarium oxysporumは99.8%,Pseudomonas solanacearumは99.4%,大腸菌は99.9%以上が除去された。 一般細菌についても約90%程度除去した。ろ過装置に低温区,無制御区,高温区を設定したところ,いずれの供試菌も高温区で最も除菌 率が低かったが,低温区では10日後以降も接種菌がわずかに検出され続ける傾向が見られた。わが国のハウス栽培では夏場かなり高温 になるため,高温条件での除菌率低下についてさらなる調査が必要である。また,実際の病害阻止効果についても引き続き調査を行う。
|