研究概要 |
本研究の目的は,ファレノプシスの遮光による開花遅延現象の詳細を明らかにし,葉中糖含量の変化の点から開花生態の基礎的知見を得ることにある.今年度は,昨年度に決定した分析条件を用いて,促成処理前後及び開花遅延(遮光)処理前後の葉中糖含量の測定を行った. 促成処理実験には,成熟株を供試し,7月8日から6週間,蛍光灯照明のインキュベータを用い,日長12時間,昼温22℃夜温20℃として低温処理を行った.高照度区(PPFD 約100μmol m-2 S-1)及び低照度区(PPFD 10-25μmol m-2 s-1)を設定した.葉中糖含量の測定は,処理開始時,処理開始後3週目,処理終了時及び処理終了後8日目とした.その結果,低温・高照度区の全個体で処理終了時に花茎が確認され,他の区での抽だいは1月になった.糖含量を比較すると,低温・高照度区では処理開始3週間及び6週間のスクロース,フルクトース含量が高く,処理終了後8日目にスクロース含量が低下し,他の2区と同程度になったが,フルクトース含量は高いままであった.グルコース含量は各処理区の差が小さかった.フルクトースが検出される個体数は低温・高照度区以外で少なかった. 遮光処理に関しては,成熟株を供試し,9月17日から6週間,ガラス温室内に設置した強遮光装置内(平均PPFD0.5μmol m-2 s-1)で処理を行い,処理開始時及び処理終了時に葉中糖含量を測定した.処理終了時,゚スクロース含量は開始時の5.5%に低下したが,グルコース含量はほとんど変わらず,フルクトースが検出された個体は少なかった.無処理区の糖含量は,スクロース及びグルコースは処理開始時とほぼ同量検出されたが,フルクトースが検出ざれる個体が増加した. フルクトースは,全般に含量が低いため検出感度に問題があるが,開花促進実験でも,開花遅延実験でもフルクトース含量の多寡が花成と対応しており,糖代謝が花成反応に関与している可能性が示された.
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