研究概要 |
本研究の目的は土壌中に存在する植物病原菌Verticillium属菌を培養することなしにポリメラーゼ連鎖反応(PCR)の技術を用いて定性的検出を行なうことであった。 初年度(平成9年度の成果) 真菌類の核およびミトコンドリアリボゾームRNA遺伝子に特異的なプライマーを用いて増幅したDNAを制限酵素処理をしてVerticillium属菌6種(V.albo-atrum,V.dahliae,V.longisporum,V.nigrescens,V.nubilum,V.tricorpus)に特異的なRFLPパターンを見いだした。 次年度(平成10年度の成果) Verticillium属菌6種のうち特に日本で被害が多いV.dahliaeに注目し、本菌の汚染土壌を用いて、V.dahliaeをPCRにより検出できるか否かを調べた。 1)nested-PCRによる検出 まず、Robbら(1991)が開発したV.dahliaeの種特異的なプライマーを用いて、汚染土壌から抽出した土壌バイオマスのDNAを鋳型としPCRによってV.dahliaeのDNAが増幅できるか試みたが、失敗におわった。次に真菌類のリボゾームRNA遺伝子のITS領域を増幅するプライマーにより一次増幅を行い、増幅産物をそのまま鋳型にしてV.dahliae特異的プライマーを二次増幅に用いるnested-PCRを行なったところ、土の生重1gあたり微小菌核3個あれば検出できることがわかった。これは従来の方法で行なうと一ヶ月以上かかる結果を1日でできることに利点がある。 1) SSCP法による系統の判別 V.dahliaeはナス科植物に対する病原性に基づき大きく4の菌群(A群:ナス系、B群:トマト系、C群:ピーマン系、E群:ナス、トマト、ピーマンには病原性を示さない)からなっており、現在のところまで、トマト系(B群)は遺伝子レベルで他の菌群と異なっていることがわかっており、V.dahliae特異的プライマーによって増幅される内部の遺伝子領域でも一カ所塩基が置換している部位がある。そこで一塩基の違いを検出できるSSCP(Single Strand Conformation Polymorphism)法を試みた。その結果、トマト系ではlパターン、その他の系統では3パターンが検出できた。これらの3パターンの特性については現在調査中である。この方法が確立できれば従来2、3ヶ月かかっていた土壌中に存在するV.dahliaeの菌群(系統)の判別が1から2日のうちに完了できる。
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