研究概要 |
Act3pは酵母の生育に必須なアクチン関連タンパク質(Actin-Related Protein:Arp)であり、そのアミノ酸配列のほぼ全域でアクチンに相同性を示すが、2ケ所に他のアクチンファミリータンパク質には存在しない挿入ペブチド領域がある。Act3pは核に局在しており、遺伝子発現制御への関与が示唆されている。Act3pのカルボキシ末端にヒスチジンタグを付加してゲノム上のACT3遺伝子と相同組換えを行うことで、Act3p-His6を発現する酵母株を作製した。この株の抽出液から、Ni-NTAカラムを利用して、Act3p-His6が含まれるタンパク質複合体を単離した。この両分をさらにゲルろ過カラムで分画し、抗Act3p抗体を用いてウエスタンプロットを行い、Act3pがおよそ300kDaのタンパク質複合体に含まれていることが示された。現在、このタンパク質複合体に含まれるタンパク質の解析を行っている。 Act3pのアミノ酸配列の情報を用いてヒトESTデータベースをスクリーニングしたところ、Act3pに相同性を有する2つの配列が見い出された。これらの全長の配列を決定したところ、これらは互いに94%相同な新規Arpのアイソフォームであり、これらをhArpNα,βと名付けた。hArpNα,βとGFPとの融合タンパク質をHeLa細胞で発現させたところ、両者とも核への局在が観察され、ユウクロマチン領域にその多くが存在していた。さらに、hArpNα,βの組織特異的な発現をRT-PCRを用いて解析したところ、hArpNβは様々な組織で広く発現が認められるのに対し、hArpNαは脳でのみ発現していることが示された。hArpNα,βが出芽酵母Act3pと同じクラスに属するかについてはさらに検討が必要であるが、これらの結果は、ARPが脊椎動物の核機能にも関与しており、さらに組織特異的な機能をも有している可能性を示している。
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