研究概要 |
オオミジンコ(Daphnia magna)は血リンパ中に16量体ヘモグロビンを複数種類有し,その発現量を迅速に増加させることで溶存酸素濃度の低下に適応している。これらのヘモグロビンを構成するサブユニット鎖は2つのヘム結合部位を持つ2-ドメイン構造を有することが知られている。 染色体歩行によりヘモグロビン遺伝子群を含む約13kbの染色体全域の全塩基配列を決定した。その結果,4つの遺伝子が同一の方向に隣接して存在することが明らかになり,その遺伝子間配列にはヒトやマウスで見出されている低酸素下で働く転写囚子HIFIの認識配列(CACGTG)と相同な配列が複数存在することがわかった。現在、ミジンコの核抽出液を調製しHIFIの認識配列と予想される配列を含むDNAを用いて、ゲルシフトアッセイを行っている。 オオミジンコより精製したヘモグロビンを二次元ゲル電気泳動により6種類のサブユニット鎖に分離し、そのサブユニット鎖のN末端アミノ酸配列を決定した。その結果、4種類のサブユニット鎖の存在が明らかとなった。このヘモグロビンを未変性の条件下で等電点電気泳動により分離した結果、6種類のヘモグロビンからなることが示された。低酸素条件及び通常酸素条件下で飼育したオオミジンコから陰イオン交換カラムを用いてヘモグロビンを粗精製し,各々を二次元ゲル電気泳動によりサブユニット鎖に分離した。結果,6種類のサブユニット鎖は全て低酸素下で誘導を受けていること、通常酸素条件下では主に2種類のサブユニット鎖が発現していることが明かとなった。また、現在塩基配列が決定されている3種類のサブユニット鎖についてはノーザンブロットの結果から、転写の段階で誘導されていることが示された。これらのことから、6種類のサブユニット鎖はそれぞ異なった発現を示すものと考えられる。
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