研究概要 |
カラマツ属ではcpDNAが父性遺伝することが、カラマツとヨーロッパカラマツとの雑種で確かめられた。cpDNAのrbcL領域にグイマツにはあるがカラマツにはない制限サイトが見つかった(白石ら,1996)。この制限サイトを利用して、雑種カラマツにおけるcpDNAの遺伝様式を調べた。 樺太系グイマツとカラマツの各2個体を親木とする二面相互交配家系を用い、親木のカラマツおよびグイマツからそれぞれ1個体、カラマツ同士の交配家系から7個体、グイマツ同士の交配家系から6個体、カラマツを母樹としグイマツを花粉親とする雑種から13個体、逆交配の雑種から,10個体を材料に供した。新葉からDNAを抽出し、PCRによってrbcL領域の一部(1,309bps)を増幅した。RFLP分析はPCR産物を鋳型として、nestedPCRを行い調整した。PCR産物(384bps)を精製後、制限酵素TthHB8Iによって消化し、アガロースゲル電気泳動法によって分離した後、エチヂウムブロミド染色し、断片の撮影を行った。 カラマツおよびカラマツ同士の交配家系では、断片1本が得られるカラマツ型を示した。グイマツおよびグイマツ同士の交配家系では、2本の断片が得られるグイマツ型を示した。種間交配家系では、カラマツが母樹でグイマツが花粉親である交配家系の場合、3家系13個体全てにおいてcpDNAはグイマツ型を示した。逆の交配家系では、1個体を除く3家系9個体においてcpDNAはカラマツ型を示した。カラマツ属樹木のcpDNAは父性遺伝することが、グイマツとカラマツの相互交配家系においても確認された。しかし、グイマツ×カラマツの1個体がグイマツ型を示し、カラマツ属では希にcpDNAが母性遺伝や両性遺伝する可能性が示唆された。今後、調査個体数を増やしてこれらの生じる割合を調べ、雑種家系の遺伝構造の解明を行いたい。
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