研究概要 |
本研究の目的は,林業用ベースマシンに自己学習型制御方式を導入して,傾斜不整地における自律的安定性の確保するために必要な,基礎的知見を得ることにある。このために以下の検討を行った。 1. 自己学習システムの検討 自己学習型制御システムとして利用可能な,ファジィ,ニューラルネット,遺伝的アルゴリズム,カオスなどを比較検討した結果,実時間制御に必要な速度の面から,ニューラルネットが有利であることがわかった。また,現実の複雑な事象に対応するためには,学習のための教師信号としてファジー関数を利用することによって,学習回数を低減可能であることがわかった。 2. 制御システムの構築とシミュレーションによる検討 コンピュータシミュレーションを行うために,不整地上の移動に有利な半脚式機械の力学モデルを構築した。このモデルを用いて,まず歩行動作によって力が加わる土壌の反応について検討した。土壌を個別要素法を用いてモデル化した結果,歩行動作時の反力,掘削量,滑りについて精緻にシミュレートすることが可能となった。 3. 不整地における車両の挙動の検討 森林内における機械の移動が林地に与える影響と,その後の回復状況について検討した結果,歩行時の掘削は圧縮ではなく滑りであることが示唆された。また,森林内作業が残存木に与える影響について被害状況を調査した結果,残存木の傷は主に伐木造材作業において生じることが明らかになり,これを防ぐためには機械の大きさに合わせた十分な作業スペースを確保することが,オペレータの視界の確保にもつながり望ましいと考えられた。
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