森林セクターの炭素固定機能のメカニズムを解明するための森林資源及び木材製品の炭素固定量を評価することは2年計画の初年度の研究重点としてきた。まず日本における森林バイオマスによる炭素固定量と成長量による年間吸収量を把握した上で、長伐期の導入、国産材利用の促進などの方策導入によって森林バイオマスの炭素固定量がどの程度変わるかについて複数のシナリオを通じて予測した。その結果から森林資源経営及び利用方針の変化にしたがって、森林バイオマスの炭素固定量能力は大幅に変わることは明らかになった。一方で森林資源の出口部分にあたる木材で建設される住宅の炭素固定量、建築廃材の焼却による炭素排出量を計算し、自ら開発した住宅動態予測モデルに基づいて、住宅の耐久性向上による炭素固定能力の変化について分析した。以上の結果に基づいて今の耐久年数を維持する場合、40年後の住宅解体材による炭素排出量は2000万トンを越えることはわかった。以上の分析結果を踏まえ、森林セクターの炭素固定機能を評価する方法をまとめた。 研究データの収集については、亜寒帯林及び熱帯林の炭素固定データを蓄積している中国とタイを対象として日本国内で関連データを収集した上で、現地の実態調査及びインタビューをも行った。収集されたデータのクリーニング及び入力(スキャナーであるいは人工で)はほぼ終了したが、データの一次分析は行っている段階にある。 2年度の研究計画としては森林セクターの炭素固定機能評価モデルの構築、モデルのパラメータ同定、森林セクターの温暖化軽減機能のシミュレーション、森林セクターの炭素固定のコスト評価などを中心として進める予定である。
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