研究概要 |
前年度に引き続き、木材腐朽菌Phenerochaete chrysosporiumの二次代謝産物Veratryl alcohol(VA)の蓄積が、培地へのフェニルアラニン添加により阻害される機構を明らかにするために、フェニルアラニン、又、アンモニウムイオンの添加がアンモニア同化酵素(L-Glutamate:NADP^+ oxidoreductase,EC1.4.1.4(GDH),L-Glutamate:ammonia ligase,EC6.3.1.2(GS))活性に与える影響を検討した。 まず、培地に添加したアンモニウムイオン、又、フェニルアラニンは、添加後5日、又、7日で代謝され培地より消失した事を見出した。フェニルアラニンの減少と、誘導されるフェニルアラニンアンモニアリアーゼ活性(PAL)は同期していたため、菌体は、PAL活性が高い時期に、フェニルアラニンからの窒素を獲得できたと考えられた。しかし、フェニルアラニン、又、アンモニウムイオン添加数時間後のGS,GDH活性には変動が観察されなかった。その点に関し、菌体内の窒素代謝の様相を解明するには、本研究のように酵素活性の変動の検討だけでは限界があると考えられた。 その間、米国のTowersらが^<15>N標識したアミノ酸を用い、木材腐朽菌Lentinus lepideusにおいて、フェニルアラニンアンモニアリアーゼを中心とした窒素のリサイクル機構を、^<15>N-NMRを用い報告した。この^<15>N標識化合物を用いる方法は、本研究で行っている酵素活性の変動から考察する方法に比べ、菌体に対するアンモニウムイオン、フェニルアラニン添加の影響を検討する点においては適当な方法ではないかもしれないが、リサイクルの証明には最も強力な方法と考えられた。しかしながら、助成を受ける間には、実験を進めることはかなわなかった。現在、これまでの結果を取りまとめているところである。
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