前年度の研究で酸化鉄微粒子へのレクチン固定化とその精製法を検討して、さらにそのレクチン固定化微粒子による培養菌体の吸着試験を行ったが、今年度はその方法を実際に天然環境の海底堆積物からの微生物分離に適用することを試みた。酸化鉄微粒子は表面をストレブトアビジンによりコーティングされたものを用い、ビオチン化された小麦胚芽レクチン(WGA)を表面に固定化した。海底堆積物は東京湾(9月16日)でマツチプルコアーサンプラーを用いて採集した。さらに神奈川県油壷湾(12月11日)でフレーガーコアラーにて採集した。それぞれの堆積物表層の泥1mLをピペットで採取してろ過海水に約10倍容量となるように希釈した。さらに1.9%ホルマリンを添加して、微生物を固定した後、4℃で冷蔵保存した。固定堆積物サンプル0.05-0.5mLを5mLの緩衝液に添加して、さらにレクチン固定化微粒子を1.25x10^9/tubeとなるように緩衝液・試料の入った平試験管に添加した。室温で1時間緩やかに回転撹拌させながら微生物を微粒子に吸着させたその後、120mg/mLのN-acetyl glucosamineを添加して、室温30分回転撹拌して吸着微生物の溶出を試みた。最後にChymotrypsin 1mg/mL溶液で固定化微生物の完全剥離を試みた。糖溶出により回収された微生物と酵素処理により回収された微生物をそれぞれDAPI法で計数した。糖による菌体の溶出はばらつきがあったのに対して、酵素処理による菌体剥離は比較的良好な結果を得た。実験は繰り返し行っているが堆積物のDAPI法により得られる総菌数のおよそ10-50%のものがこの方法で計数された。レクチン固定化微粒子に一端細胞を吸着させてから、非生物粒子を洗浄除去しているため、最終的に得られる顕微鏡像は鮮明であった。今後、この方法を堆積物の微生物研究に応用して行きたいと考えている
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