研究概要 |
・ 電気生理学的手法による嗅覚受容能力の相違の解明 昨年の報告においては,電気生理学的な実験の結果から,養殖マダイと天然マダイで数種のアミノ酸に対して嗅覚応答に相違が認められ両種の魚で嗅覚器の受容能力が異なることが示唆されたことを報告した。本年度の研究においては,それぞれの魚群を複数の生産漁場よりサンプルし(天然マダイ2群,養殖マダイ2群),追加実験を行った。その結果,昨年度と同様に天然マダイと養殖マダイで嗅覚受容特性に相違は認められたが,天然・養殖マダイのそれぞれの各個体群ごとにも相違が認められた。したがって,天然マダイと比較して養殖マダイの嗅覚能力は劣るとは結論されず,個体群ごとに異なる嗅覚受容特性を持つことが推測された。 本研究成果に関しては,Chemical Ecologyに投稿中である。 ・ 人工種苗マダイの鼻孔隔皮形成過程の解明 鼻孔異常の発現する時期を特定するために,人工種苗マダイの鼻孔形態をふ化から63日間観察し,鼻孔隔皮の形成過程を明らかにした。ふ化後26日以降では,観察した全個体に鼻孔隔皮形成組織が出現したが,その発達過程は個体によって異なった。最終的に4割の個体が鼻孔隔皮を形成し前・後鼻孔を完成した。その他の個体では隔皮形成組織に充分な発達が認められないため,鼻孔異常は隔皮形成組織の発達不良によると考えられた。ふ化後40日以降では鼻孔隔皮形成個体と未形成個体の出現頻度はほぼ一定するので,この段階で将来とも正常鼻孔または異常鼻孔個体となるかを識別できると考えられた。 本研究成果は,日本水産学会誌に受理され本年中に掲載される予定である。
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